この資料は、導入事例について、成果の数字だけでなく、そこに至るまでにどのような打ち合わせを重ね、何をヒアリングし、実際に何を作ったのかを、1社ずつ丁寧に説明するものです。多くの会社に共通しているのは、プログラミング未経験者や非エンジニアを含む、日々の業務を担当している社内のメンバー自身が、手を動かしてツールや仕組みを作り上げたという点です。
支援はどの会社でも同じ枠組みで進めています。最初に行うのは初回のヒアリングです。ここでは業務を一番よく理解している人に必ず参加してもらい(対象は1社につき3部署までとしています)、どの作業に時間がかかっているか、どのような判断基準で仕事を進めているか、どこでミスが起きやすいか、どの業務を効率化したいかを一つずつ洗い出していきます。次に、洗い出した業務に優先順位をつけ、まずは小さく効果を出しやすい業務から着手する対象を決めます。ここまでが準備の段階にあたります。
そのあとの構築の期間では、実際に手を動かすのは社内の担当者本人です。定例のミーティング(月2回または週1回のペースで設定することが多い)とチャットでの随時相談を組み合わせ、途中でつまずいた点をそのつど解消しながら形にしていきます。最後に、できあがった仕組みを実際の業務で使いながら改善を重ね、他の業務にも応用を広げていく定着・展開の段階に入ります。
以下では、この流れを各社それぞれの内容に沿って説明します。
M社はWebマーケティングの支援を手がける会社で、広告運用のクライアントを約30社抱えています。中心になって取り組んだのはO.W.氏で、社内ではCTOという立場にありますが、導入前はChatGPTやGeminiを調べ物程度に使う、いわゆる非エンジニアでした。
もっとも負担が大きかったのは月末の広告レポート作成でした。約30社分のレポートをまとめるのに丸1週間かかっており、管理画面を一社ずつ確認し、数字をスプレッドシートに手入力し、スライドの体裁を整えるという工程がすべて手作業になっていました。1社あたり1〜2時間を要するうえ、担当者によって仕上がりの品質にばらつきが出て、抜け漏れや数字のズレ、納品の遅延も起きていました。
打ち合わせは、初回ヒアリングと月2回ペースの定例・壁打ちを合わせて約6〜8回(概算)でした。これとは別に、毎日使える相談窓口で日々のチャット相談も重ねています。まず基礎を1週間ほどで身につけ、そのあとは自社の実務に合わせて並行して開発を進めるという流れで進めました。
初回のヒアリングでは、月末月初がレポート業務でほぼ潰れてしまうこと、1社あたり1〜2時間かかっていること、品質が担当者によってぶれることが課題として挙がりました。
O.W.氏が実際に作ったのは、Google広告のAPIからデータを取得し、GASで整形したうえでGoogleスライドを自動生成し、指定のフォルダに格納してメール通知まで行う広告レポート自動生成ツールです。あわせて、Claude APIを使って課題の分析と改善案の下書きまで自動化しました。このほか、ペット火葬業界向けに、Google Maps APIと連携して競合の状況を可視化し、広告予算の最適化を提案する件数予測ダッシュボードも構築しています。受講から1ヶ月で本番のツールが稼働し、2ヶ月の時点で大小合わせて約20個のツールを内製するまでになりました。
一番時間を使ったのは、スライドの自動生成でレイアウトが崩れてしまう問題への対応でした。出力される形式を強制的にそろえる工程に手間がかかりましたが、試行錯誤を重ねてこれを解消しています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 1社あたりのレポート作成 | 1〜2時間 | 約1分(99.2%減) |
| 30社分の月末レポート | 丸1週間 | 30分(99.6%減) |
毎月1日での納品が実現し、抜け漏れも解消しました。
A社はWeb広告代理事業を手がける会社です。中心になったのはE.Y.氏で、取締役として業界に15年携わってきましたが、エンジニアとしての知識は持っていません。役員メンバーと一緒に取り組みました。
導入前は、リサーチに数時間から半日を要し、クリエイティブの制作も手動での試行錯誤が中心でした。ベテランの経験に業務が依存しており、ノウハウが個人の中にとどまって属人化していたほか、マニュアルもニュアンス頼りで再現性が低く、事業を拡大しようとしたときの壁になっていました。
支援期間は約3ヶ月です。打ち合わせは、初回ヒアリングと月2回ペースの定例、そのほかグループでの相談を合わせて約7〜8回(概算)です。定例ミーティングとグループ相談、チャットでの随時相談を組み合わせながら進めています。
ヒアリングでは、ベテランのやり方が言語化されていないこと、若手が育つまでに時間がかかること、リサーチから制作までの工程が長いことが課題として挙がりました。
E.Y.氏たちが作ったのは、リサーチの自動化、クリエイティブの生成、Slackでの指示による広告入稿と自動調整、スプレッドシート連携によるアラートを使ったカスタマーサポートの自動対応、そしてレポートの自動化です。AIエージェントを作り込んでいく過程で、もともと言語化しきれていなかった業務マニュアル自体の解像度が上がっていったといいます。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| リサーチ〜クリエイティブ生成 | 数時間〜半日 | 数十分(約20分の1) |
| 若手の再現度 | ― | 経験1〜2年でベテラン15年の約70%を再現 |
O社は中小企業向けのマーケティング支援を行う会社です。代表のI.S.氏を含め、社員4名とパート1名を合わせた計6名全員が非エンジニアという体制でした。導入前から個人としてChatGPTやGeminiを使う習慣はありましたが、業務での本格的な活用には至っていませんでした。
毎週の定期タスクや定期案件に時間を取られ、新規開拓に踏み出せない状態が続いていました。提案資料や定例資料の作成に2週間かかり、掲載メディアのリサーチにも1時間を要し、Googleビジネスプロフィールを数十件目視で確認する作業も発生していました。
打ち合わせは、初回ヒアリングと約3ヶ月にわたる週1回の定例を合わせて約12〜14回(概算)になります。基礎を学んだあと実務に合わせて構築を進め、毎週の定例ミーティングで詰まった箇所を相談しながら、あわせてチャットやグループ相談も活用しました。特に力を入れて習得したのは、業務を小さく分解する「ワークフロー分解」と、分解した単位でAIの精度を反復的に改善していく「セルフリファイン」という考え方です。
ヒアリングでは、定型業務に時間が埋まってしまうこと、資料作成の負担が重いこと、目視でのチェック作業が多いことが課題として挙がりました。
実際に作ったのは、Claude for Chromeを使った掲載候補メディアのリサーチ自動化、Googleビジネスプロフィールのレビューを一括取得する仕組み、Claudeを使った提案資料の自動生成支援、そしてCursorでのエージェント開発です。
途中、AIに言われた通りに作業している感覚になり、熱量が下がってしまう時期もありましたが、毎週の定例でそのつど糸口を見つけながら乗り越えています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 提案・定例資料作成 | 2週間 | 2〜3日(約70%減) |
| メディアリサーチ | 1時間 | ほぼ瞬時 |
| 全体業務 | ― | 体感20%圧縮 |
I社は飲食店向けにSNSマーケティングの支援を行う会社です。中心になったのは管理部のS.Y.氏で、プログラミングの経験はありませんでしたが、Salesforceの標準機能を使いこなす素地はありました。
Salesforceの標準機能だけでは欲しい表示が実現できず、データの蓄積やKPIの設計、環境構築の面で技術的な壁がありました。ChatGPTのカスタムGPTsで簡単な自動化はできても、それ以上には進めない状態が続いており、必要なダッシュボードは自力で作ろうとすると2年はかかるという見立てでした。
支援期間は約4ヶ月です。打ち合わせは、初回ヒアリングと月2回ペースの定例、随時の相談を合わせて約8〜10回(概算)でした。基礎学習に加えて実務に即したカリキュラムを組み、定例ミーティング・グループ相談・チャットを組み合わせて進めています。構築にあたっては、最初から100%の完成度を目指すのではなく、まず60%程度で形にしてフィードバックを受けながら磨き上げていく方針を取りました。
ヒアリングでは、売上や目標が可視化できていないこと、議事録や問い合わせ対応といった管理部の業務が手作業に頼っていること、社内全体へのAI定着が進んでいないことが課題として挙がりました。
S.Y.氏が作ったのは、Claude Codeを使ったSalesforceのカスタムダッシュボードです。あわせて、Notionに蓄積したマニュアルをもとに回答したりカレンダーを取得したりするSlack上のAI秘書、Google Meetの議事録を自動作成しNotionでの文字起こしからタスク抽出や取引先の紐付けまで行う仕組み、SalesforceとGoogle Place APIをMCPで連携させる仕組み、代理店手数料計算の自動化なども構築しています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| ダッシュボード構築 | 自力なら2年かかる想定 | 4ヶ月で実現 |
全社でClaudeを使える環境を整え、AI推進の担当を2名体制で置けるようになりました。現場からは「見やすい」という声も上がっています。
D社は少人数体制のD2Cメーカーです。広告代理店出身でWeb広告運用の知見を持つ代表本人が、中心となって実装に取り組みました。会社は代表と正社員1名、業務委託というごく少人数の体制です。
受発注の作業では、管理画面からCSVを落として倉庫管理システムへ手入力するという流れになっており、これに毎日15〜45分かかっていました。加えて、複数の広告媒体の管理画面を毎時間巡回して確認する必要があり、これを外部に自動化を依頼しようとすると見積もりが高額になることも分かっていました。
打ち合わせは、初回ヒアリングと月2回ペースの定例・相談を合わせて約5〜6回(概算)です。学習に加え、毎日使える相談窓口とチャット、定例ミーティングを活用しながら進めました。人間が普段行っている作業の手順を、そのままAIに再現させるという方針で構築しています。
ヒアリングでは、毎日発生する地味だが誰かがやらなければ止まってしまう業務があること、管理画面の巡回負担、外注コストの高さが課題として挙がりました。
代表が作ったのは、Claude Codeを使った受発注の自動化です。管理画面を検索してCSV化し、倉庫のCMSと連携させるところまでを自動化しました。あわせて、広告のCPAが基準を超えた際にSlackへ通知する仕組みや、在庫管理・カスタマーサポート対応など約10個のAIエージェントを構築し、データはNotionに集約しています。
運用を始めた当初は、一度完成したと思っても翌日には動かなくなっているという課題もありましたが、改善を繰り返しながら安定させていきました。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 受発注作業 | 毎日15〜45分 | ほぼゼロ |
| 広告管理画面の確認 | 毎時間の巡回 | Slack通知で巡回不要 |
浮いた時間は商品力の向上に充てられるようになりました。
W社はSNS広告の代理店です。TikTok・Google・Metaを中心に広告運用を手がけており、社員は全員フルリモートで働いています。中心になったのは代表のA.H.氏で、SEとしての経験がありました。
広告運用の性質上、土日も管理画面を確認する必要があり、社員が休みを取りにくい状態が続いていました。ルーティン業務に追われて本来注力すべき仕事に時間が回らず、請求書の送り漏れが起きることもありました。この状況を受けて、アポインターと経理の2名を新たに採用する計画もありました。
支援期間は約4ヶ月で、段階的に構築を進めました。打ち合わせは、初回ヒアリングと月2回ペースの定例を合わせて約8〜10回(概算)です。あえて完全な自動化を避け、「半自動化」を選んだのが特徴で、これは完全自動化してしまうと運用者自身の思考力が落ち、API仕様の変更などにも気づけなくなるという判断によるものです。人事評価にAI活用度を組み込むことで、組織全体への定着も図りました。
ヒアリングでは、土日の管理画面確認が必要なこと、請求書まわりでミスが起きていること、ルーティン業務が多いことが課題として挙がりました。
A.H.氏が中心になって作ったのは、TikTok・Google・Metaの管理画面を1つに統合したUIです。あわせて、送付先の振り分けまで含めた請求書の自動生成・自動送信の仕組みや、データを抽出してグラフ化する仕組みも構築しました。開発にはClaude Codeを中心に使っています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 土日出勤(管理画面確認) | 必要だった | ゼロ(土日は代表1人で対応可能) |
| ルーティン業務 | 多い | 体感8〜9割削減 |
| 請求書の送り漏れ | 発生あり | ゼロ |
| 採用計画 | 2名を採用予定 | 見送り |
給与計算を約250社から受託し、労務相談には15名のスタッフがあたっている社労士法人です。顧問先からの労務相談、給与計算、勤怠データの取りまとめ、就業規則・規程の改定対応、法改正ニュースレターの発行と、業務が多岐にわたっています。
もっとも時間を取られていたのは、顧問先からの労務相談への対応でした。スタッフ15名がそれぞれ、過去の類似事例を探して回答を下書きする作業に1日あたり約45分を使っていました。勤怠データは顧問先ごとに形式がばらばらで、150社分を毎月1社あたり約1時間かけて手作業で変換・集計していました。給与計算のチェックは受託250社に対して1社あたり月45分、就業規則・規程は対応先200社について年2回の法改正のたびに見直しが発生し、法改正ニュースレターの作成にも毎月8時間かかっていました。
打ち合わせは合計で約10回(概算)です。内訳としては、まず30分の無料相談で現状の課題と気になる業務を確認し、続く90分の研修で業務の洗い出しと入力禁止情報のルールづくりまでを行いました。研修には、相談対応や給与計算の業務を一番よく理解しているベテラン2名に参加してもらっています。そのうえで最初のモデル業務として労務相談の一次回答を選び、2〜6週間の導入支援のあいだに業務の棚卸しと構築の打ち合わせを2〜3回重ねました。運用開始後は月1回60分の定例で定着状況を確認しながら、勤怠データの前処理、給与計算チェック、規程の差分チェック、ニュースレターへと対象を順番に広げています。
ヒアリングでは、労務相談のたびに過去の類似事例を探す時間が長いこと、勤怠データの形式が顧問先ごとに違い変換に手間がかかること、給与計算チェックで不整合を見落とすリスクを抱えていたこと、法改正のたびに規程の見直しとニュースレター作成が重なることが課題として挙がりました。
一つ目は、労務相談の一次回答AIです。過去の相談事例を検索し、回答のドラフトまで作成します。最終回答は必ず社労士が確認する前提の仕組みです。二つ目は、勤怠データ集計の前処理の自動化で、形式がばらばらなデータの変換と集計をAIが行います。三つ目は給与計算チェックの補助で、前月比の異常値、料率の適用、残業単価の不整合をAIが先に洗い出し、人の最終確認は残します。このほか、法改正時に就業規則・規程の差分を抽出して影響を整理する仕組みと、過去の型を参照して法改正ニュースレターを自動でドラフトする仕組みを構築しています。
| 項目 | Before | After |
|---|---|---|
| 労務相談の一次対応 | スタッフ15名×1日約45分の検索・下書き | 40%削減(月90時間相当) |
| 勤怠データ集計の前処理 | 150社×月1時間の手作業変換 | 60%削減(月90時間相当) |
| 給与計算チェック | 250社×月45分 | 30%削減(月56時間相当) |
| 規程の改定差分チェック | 200社×法改正年2回 | 1社あたり1時間短縮(年400時間相当) |
| 法改正ニュースレター作成 | 月8時間 | 月2時間 |
月あたりでは合計約240時間、年間に直すと規程対応分も含めて約3,300時間分の削減にあたります。AIに任せきりにするのではなく、労務相談も給与計算も人の最終確認を残す設計にしている点が特徴です。